「動線」とは何か?(動線に関する基礎知識)

動線とは何か?

デジタル大辞泉によると、「動線」とは、

建築や都市における人や物の動きを示す線。方向・頻度・時間的変化などを表示し、建築設計や都市計画の判断材料とする。

とあります。

建築を商業施設に置き換えれば、スーパーマーケットや大型ショッピングセンターなどにおいて、人がどのように移動するかを示す線を意味します。

スーパーマーケットでは入口→野菜売場→肉売場や魚売場・・・最後はレジ、というように動線が形成されます。

都市にも人や車の動きを示す線があります。駅前に百貨店がある場合、駅を降りた人の多くがその百貨店に向かうような場合などをイメージすると分かりやすいですね。

高速道路のインターチェンジ付近にメジャーな商業施設、例えば大型ショッピングセンターがあり、高速道路をおりた車の多くがその大型ショッピングセンターに向かうような場合も同様です。

頻度を通過する人や車の量、都市計画を出店計画に、それぞれ置き換えることで、ここでは出店判断向けの動線を、

動線とは、商業施設や都市における人や車の動きを示す線。方向・量・時間的変化などを表示し、出店計画の判断材料とする。

と定義します。

立地判断では、動線の何を確認すればよいのか?

新規出店時にその立地を判断する際に、商圏と同様に、物件の前面の動線もよく確認する必要があります。

では具体的に動線の何を確認すればよいのでしょうか?ということを、考えてみたいと思います。

動線について、観察すべきポイント(その1)

出店判断向けの「動線」の定義は、

動線とは、商業施設や都市における人や車の動きを示す線。方向・量・時間的変化などを表示し、出店計画の判断材料とする。

でした。

さて、動線というと、「物件前を何人の人が通行しているか、何台の車が通っているか」という、「量」に注目しがちです。

確かに量は重要です。少ないより多い方が、開店後に集客不振に陥る危険性は低くなるはずです。

量を調べるには、カウンターで一定時間内に通過する人や車の量を計測する必要があります(その数字は売上予測にも利用できますが、その点の詳細はまた後日お話しします)。

しかし単純に量が多ければ良いかというと、そう単純な話ではありません。「量」を測ったら、次はその「質」を考える必要があります。

動線の質とは?

動線の「質」の定義には、方向と時間的変化が含まれています。

計測時には、通過する人や車が左から右へ通過するのか右から左へ通過するのか時間帯ごとにどう変化するのかが分かるように計測する必要があります。つまり、カウンターは2台いるということです。男女比年齢層主な客層(勤め人、学生、住民、買い物客など)なども観察するべきです。

要は、どのような人が、どちらからどちらへ、どのくらいの量、通過しているかを確認するのです。

この辺りまでは、実行されている方も多いのかもしれません。

動線について、観察すべきポイント(その2)

昨日の記事(動線とは何か?~観察すべきポイント(その1)~の続きです。

物件の前をどのような人が、どちらからどちらへ、どのくらいの量、通過しているかを計測・確認しました。

では、量と質の次は何を考えるべきか?それは、その動線の「意味」と「理由」です。なぜ物件の前を人や車が通行するのか、ということです。

駅の出口付近は多くの人が通行しています。それはなぜかというと、駅を利用する人が必ず通過する、つまり、通行の必然性が高いためです。

そうした動線上の物件は非常に人気があり、賃料も高額です。

駅等の集客力のある施設(以下TG: Traffic Generatorの略)と別のTGの間を結ぶ動線は、通行の必然性が高く、強力になります。

しかし、あるTGの周囲に複数のTGが立地する場合には人や車の流れがばらけてしまうため、それぞれの動線の通行の必然性は低くなり、強度は弱まってしまいます。

立地判断において、動線を観察する時には、「どのような人が、何のために、どこに向かっているのか」も把握するようにしましょう。

ここで、動線の見方についての演習問題を出したいと思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

演習問題「動線の見方」(問題)

コンビニやカフェなどを開業しようとする場合、物件Aと物件Bをどう評価しますか?考えてみてください。

【問題1】物件Aの立地判断

物件Aは、駅と高層オフィスビルを結ぶ動線上にあり、高層オフィスビルで勤務する大勢の勤め人が、そのビルに向かって平日の毎朝通勤のために通過している。

【問題2】物件Bの立地判断

物件Bは、駅と駅から500メートルほど離れたところにある百貨店の間を結ぶアーケード沿いにあり、ちょうど駅と百貨店の中間に位置する。物件前の通行量は県内でもトップクラスである。

演習問題の解説:【問題1】の考え方

駅と高層オフィスビルを結ぶ動線上にある物件A。平日は毎朝、高層オフィスビルで勤務する大勢の勤め人が通勤のために物件Aの直前を通過しています。午前8:30-8:40には物件前を、駅からオフィスビル方面へ450人弱が通過しています。平均的な始業時刻の9:00前には通行量はさらに増えそうな勢いです。

これだけを見ると、通行の量・質ともに安全な立地のように思えますが、それだけで判断してはいけません。

通行人のほとんどが勤め人ということで、勤め人の気持ちになって考えてみましょう。彼ら、彼女らの駅からオフィスに向かって歩くときの心境はどのようなものですか?

多くの人は早くオフィスに着きたいという気持ちが強いはずです。途中の信号につかまり遅刻しないかとやきもきするよりも、より早くオフィス近くに着きたいと考えるため、歩く速さは普通よりも速くなりがちです。読者の皆さんはいかがですか?

そう考えると、物件Aの前は、通行量が多いからといって、来店する人が出現する確率も高くなるとは限らないのです。いくら人がたくさん通っていても、店舗を利用しようとする気持ちがない人が大半では、商売上は意味がありません。

このように、人が目的地へ向かって単に通過するだけの意味を持つ動線があるのです。

さて、9:00以降の物件Aの前はどなるでしょう?

通勤時間が終わり通行量は激減することが予想されます。外回りの勤め人が行ったり来たりの状態が午前中続いて昼時を迎えます。

高層オフィスビルで勤務する人が、昼休みに物件Aの店舗に戻ってくることを期待するのは困難です。昼休み時間は限られていますから、行動半径は短くなるはずです。高層ビルの場合、勤め人はエレベーターで地上へ降りるのも一苦労です。また、勤務中は通勤に使う駅の方向にはなんとなく行きたくないものです。

昼休みが終わり、再び外回りの勤め人が行ったり来たりの状態が夕方まで続きます。

退社時間になり、物件Aの前は、朝とは逆方向に駅へ帰路を急ぐ勤め人がいそいそと通過していきます。

そして夜、ぱったりと人通りは途絶えます。

この場合、通過動線上にある物件Aよりもむしろ高層オフィスビル付近に出店機会を待つ方が良いと考えるべきなのです。

演習問題の解説:【問題2】の考え方

駅と駅から500メートルほど離れたところにある百貨店の間を結ぶアーケード沿いで、ちょうど駅と百貨店の中間に位置する物件B。物件前の通行量は県内でもトップクラスで、広いアーケードを計測困難なくらいの大勢の人が断続的に行き来しています。通行量は申し分なく、買い物客が多く含まれ質的にもまったく問題なしです。これはまたと無い出店機会だ、…と普通は考えますよね。

確かにこの情報だけから判断すると、そのような考えも成り立ちます。

しかし、動線の意味は何だと考えられますか?

人が物件Bの前を通過するのはなぜでしょう。大型の百貨店を結ぶアーケードなので、そのアーケードを通過する理由の多くは百貨店にあると考えるべきでしょう。

アーケード沿いには通行客の入店を期待する店舗が軒を並べていますが、通行客はそれらの店舗を目がけてきているのではありません。仮に誰かがある店舗を目がけてアーケードを歩いているとしても、人通りや密集する店舗の多さで、目当ての店舗を探すことは容易でないことが予想されます。

そう考えると、物件Bの前は、通行量が多いからといって、来店する人が出現する確率も高くなるとは限らないのです。いくら人がたくさん通っていても、店舗を利用しようとする気持ちがない人が大半では商売上は意味がありません。やはり、商業施設のある商業地でも、このように人が目的地へ向かって通過する意味合いの強い動線があるのです。

高い賃料に対して、実際の売上が、開店前に高めに設定した予測金額を下回る状態が続き、退店を余儀なくされることも十分に考えられます。この場合、目的地周辺の、買い物客が移動ではなく滞留する地域周辺の出店機会を積極的に探索するべきなのかもしれません。

物件Bのような物件について出店を判断する場合には、以前に入居していた業種と閉店の理由をよく確認する必要があります。物件構造上の問題(物件構造の見方については、後日改めて説明します)もあるのかもしれません。なぜ、こんなに良い立地が空いてしまったのだろう、とまずは自問するべきでしょう。