店舗開発という仕事が「分かられていない」理由

なぜ分かってもらえないか?

多店舗化するチェーン企業において、「店舗開発」という機能は必要不可欠なものです。「店舗開発」業務を担当されている方の数は相当数にのぼると思われます。

それにも関わらず、「店舗開発」「立地開発」という言葉は経営においてもメジャーなものとはいえず、多くのビジネスパーソンには正しく認識されていません。経営に関する本を手にとってみても「店舗開発」という言葉がとりあげられていることは稀です。

それはなぜかというと、「店舗開発」という業務の内容や方法に関する知識が“体系化”されていないためです。

チェーン企業というものが比較的新しいものであることが原因なのですが、これだけ小売業界での重要性が増しているにも関わらず、知識を体系化すべき役割を持つ人々もそれを十分に扱ってこなかったのです。しかし、こうした状況にもそろそろ終止符を打ちたいものです。

店舗を開業するということは、店舗開業後、そこで中長期的に収益をあげるための投資活動であり、売上高や固定的にかかる多くの費用を確定させるものです。よって、経営者層への物件提案では、『なぜ』『今』『そこに』その金額を投下すべきかという“出店の意義”をロジカルに説明することが求められるはずです。しかし、それを難しく感じる方も多いと思います。それは確かに大変難しいことで、その感覚は正しいです。後述しますが、多店舗化するチェーン企業の出店に関連する問題は想像以上に複雑で難しいものなのです。そしてこの難しい問題に一人一人が独自の方法で対処しているのが現状だと思います。その結果、店舗開発担当の説明には論理一貫性や説得力が欠け、他部署から十分な信頼が得られず、出店に向けた社内合意を得るのに多くの時間と労力が割かれることになります。

市場縮小が避けられない今日、こうした状況を打破し、この難しい問題に的確に対処できるように店舗開発担当者もそろそろ“理論武装”を真剣に行う必要があるように思います。社内で信頼され、よりメジャーな部署になるよう、まずは店舗開発担当者が変わらなければなりません。

弊社ではこうした理論武装をお手伝いするセミナー『店舗開発という仕事(初級編・中級編・上級編)』を今年から立ち上げ、毎月実施してきましたが、必要性や重要性をご理解いただける方が想像以上に多いという感触を得ました。そこで、来年から内容をリニューアルし、新講座も実施いたします。主旨に賛同される方はご記憶ください。最新情報は弊社のメールマガジンでお知らせいたしますのでご興味のある方はこちらからぜひお気軽にご登録をお願いします。

なぜ店舗開発が理解されていないのか、経営に関する知見の現状について次回はお話したいと思います。“分かってもらえない”と嘆くのはやめ、理論武装を開始しましょう!

分かってもらうためには、どうすればいいか?

昨日、業界トップクラスの某レストランチェーンの店舗開発部長と面会する機会がありましたが、やはり出ました、“「店舗開発なんて誰でも出来るんだろう?」と言う役員がいる”という話。

彼自身は大変優秀な開発マンで、当たり前のように開発業務をこなしてしまうので、簡単なように思われてしまうのかもしれませんが、“誰でも出来るだろう”と能力の低い社員を店舗開発に充てがわれ、苦労をされたそうです。

こうした“店舗開発は誰でもできる”、“簡単に店は開けられる”と思う人が後をたたないのはなぜか?

それは経営に関する知識の現状にあります。書店や図書館で経営に関する本を手にとってみてください。店舗開発に関して記載があるものはほとんどありません。店舗の開業に関するノウハウ本でも、立地の重要性くらいは記述がありますが、多店舗化についてはほとんど記載がありません。出店戦略に関する書籍も若干はありますが、これもどういう場所に出店すべきか、どう立地を評価すべきか、つまり、“1店鋪をどこに開けるべきか”という内容に集中しているように思います。要は、小売業の経営に関する知識は“店舗ありき”のものと言えるのです。店舗と顧客はあらかじめ存在することが前提とされているのです。その結果、“店を開ければ客は来る”という勘違いを誘発しているように思います。

この状況を改めるためには、まず現状をしっかり把握する必要があります。少し固い話になりますがお付き合いください。

なぜ“店舗はあって当然”、“店は簡単に開けられる”と思われてしまうのか?

それは、小売業に関する知識は“ビッグボックス”の小売業に関するものが主流であるためです。ビッグボックスの小売業とは、百貨店やショッピングセンターといった大箱の店舗をもつ小売業をいいます。これらは歴史が古いため、長い間、研究対象となってきました。こうした小売業の特徴は、“自由に立地を創造できる”ということです。乱暴な言い方になりますが、開けられる土地に大規模な店舗を開業すれば広域からでも自力で集客ができるのです。立地を選ぶ際の自由度が高いのです。

それに対して“ミニボックス”の小売業やサービス業は歴史がまだ浅く、知識の体系化が遅れているのです。その為、自社がビッグボックスであると勘違いして、それと同じように出店を考えてしまう人が生じてしまうのです。“ミニボックス”の場合、開けられる場所に単独で出店しても自力で広域から集客し続けることは困難です。むしろ集客をビッグボックスの小売業を含めた、他の集客力のある施設に集客を依存せざるを得ないのです。それが可能な立地には限りがあり、その獲得をめぐり同業者・異業者との争いになるのです。

以上のように“ビッグボックスとミニボックスは性質が異なる”ということを、まずは強く認識すべきであると思います。

これはマーケティング領域の知識に偏りがあることにも原因があります。小売やサービスを研究対象としている研究者が扱う内容は、短期的に変更が可能な店内環境に関するものに偏っているといえます。そこでは店内にいる顧客にどう対応するべきかが課題となり、メニューや接客、音響、レイアウトなどの店内環境に関する要素が顧客の購買意欲等にどう影響するか?といった内容が研究対象となります。顧客満足という言葉をよく耳にしますが、これも顧客自体が存在することが前提になっています。顧客になっていない人をどう顧客にするかというビジネスで最も重要な課題に取り組む人は少ないのです。

しかし現実は店舗の立地に応じて顧客の数や質は異なります。店舗・立地は短期的に変更が不可能な要因で、新規出店は供給のキャパシティや方法を決める意思決定ですが、これは十分に知見が蓄積されているとは到底言えない状況です。そろそろこうした問題を扱う人が出てきても良いように思いますが、まあ、実務で経験しないと、こうした喫緊の問題に対して考えることを求めるの難しいのかもしれません。

しかしこうした店舗の立地を独立して考える人を量産している状況をそろそろ変える必要があります。店舗を開業するノウハウ本が書店に多く並んでいます。自信のあるサービスメニューを準備し、店内も小洒落たものにするのは良いのですが、こうした本のモデルとなる店舗もそれをどこに出店するかで成功するか否かの大半が決まるということを、どれだけの人が分かっているのかと不安に思います。

小売経営における知見が以上のような状況なので“店舗はあって当然”、“店は簡単に開けられる”と思う人が多いのは当然といえば当然なのです。こうした状況を代えるべく、店舗開発という業務を担当する幸運に恵まれた人で意欲のある人は知恵を働かせ、それを経営における知見にしていく努力を始め理論武装をはじめるべきなのです。

 

この記事は、先日「第18回 関東 店舗開発情報交流会(於虎ノ門)」(197社303名参加)で弊社が講演させていたただいた内容の補足として書きました。『店舗開発情報交流会』は、店舗を有しチェーン展開を行う企業の店舗開発実務担当者を会員とする組織で、店舗開発に有意義な情報交換を行うことを目的としています。ご興味のある方はこちら(http://sdc-j.jp/)より事務局にお問い合わせください。