セブンイレブン沖縄県出店を受けて~最大手が始めた“後攻め”の考察~
最大手が“後攻め”を始める理由とは
“出店、店舗開発に関わる今年の7月のできごと、場所は沖縄県”と言えば、それはセブンイレブンの沖縄県開店。いよいよ出店が始まる、ということです。
既にファミリーマートとローソンが出店しており、その後からセブンイレブンが参入する、“最大手の後攻め”が始まります。コンビニは店舗数が飽和しているとよく言われる中、なぜ後からセブンイレブンが出店するのか?この点について、弊社なりの見方を共有させていただきます。
以下は、別のとある業界1位のチェーン企業のケースですが、
ある未出店の市で、「業界2位と考えていた企業」に1号店出店を先を越されてしまったことがありました。自社が抑えるべき立地・区画に出店されてしまうとよろしくなかったのですが、調べてみると、そこから100メートルほど奥まった、つまり、街の中心からは離れた場所でした。
それを踏まえて現地を確認すると、「業界2位と考えていた企業」の店舗にしてはよく集客していることが分かり、2つのことを確信したことを思い出します。
1つは、同じ市で自社が抑えるべき立地・区画に出店すれば“売れる”ということでした(実際にそこへの出店が叶った日には記録的な日販が叩き出されました)。
売上が苦しくなるコンビニ立地の見分け方
7月のセブンイレブン沖縄県出店を前に、この展開を見る上での下準備的なお話です。
街を歩いていて、同じような業態の店舗が特定の地域に集中して出店していることをよく目にされると思います。コンビニや飲食店があちこちにあるような地域は多いものです。
そんな場所に行くたびに考えてしまうことがあります。それは、“売上が最も苦しいのはどこか?”ということです。
この“癖”は便利なものなので、これを機に、皆様にもオススメしたいと思います。なぜかと申しますと、同じような業態が集中する地域で、その業態の店舗で営業不振の店舗がいち早く分かると、自社がそれとは別の業態で、かつ、周辺に競合店舗が少ない場合、物件情報の収集に向けて気の利いた営業ができるようになることが期待できるためです。
過去に個人的にもこの方法で出店に至った成功事例がありましたので、その「観察ポイント」を共有させていただきます。
現況が営業中ですとなかなか分かりにくいのですが、同一動線にある店舗であったとしても、具体的な区画や物件構造によって売上は異なると考えるべきです。
まだ周辺に競合する店舗がないとき、お客さんは“わざわざ”来店してくれるものです。しかし周囲に同じような業態の店舗が増えてくると、お客さんは“わざわざ”来店してはくれなくなります。なぜなら、行くのにより便利な店舗を利用するようになるためです。
オフィス街では、休憩時間の制限がある人も多いため、その傾向は一層強まります。
この“わざわざ来店”をお客さんに強いていた店舗はどこかを探すのです。
オフィス街の例を続けますが、
あるオフィスビルがあり、そのビル内にはコンビニエンスストアがありませんが、ビルを出て100メートルの路面に1件(以下、【A店】とする)あったとします。この場合、コンビニエンスストアが【A店】しかないのであれば、ビル内のオフィスワーカーは【A店】に出向いてくれると考えられます。
しかし、そのビル内に、あるいはそのビルにより近くて便利な区画に、別のコンビニエンスストア(以下、【B店】とする)が出店した場合、【A店】ではなく【B店】を選ぶオフィスワーカーが増えると考えるべきです。
こうして【A店】の商圏は【B店】の出店により侵食されていきます。
「潜在顧客が物理的に存在する施設」や、「滞留する交差点などがあり、それらを結ぶ道路があったとき、それらの中間に立地する路面店」は、開業当初は売れているとしても、将来的に競合の出店により商圏を侵食されるリスクが高いと考えるべきです。
「交差点と交差点の中間」や、「人通りは多いものの移動することが歩行者の主目的となっている区域にあり、周辺のより便利なところに競合店が複数ある店舗」は“苦しい”はずです。
こうした場所に、「業界トップではない企業」、あるいは「ほぼ無名の店舗数が少ない企業」が先行して出店している場合、将来的に物件化できる可能性がありますので、定期的に観察することをオススメいたします。
以上の目線で、次回から“那覇市”の地図を眺めてみたいと思います。
YAHOO!の地図でファミリーマートとローソンが確認できますので、そちらをご用意ください。
最大手が出店しそうな立地を地図で読む(那覇市版)
松山、といっても愛媛県ではなく、那覇市の58号沿いの主要交差点です。そこを中心にした地図を見てみましょう。(注:以下の内容については最近の状況について現調はしていません。過去の記憶と地図から読み取れることや確認できることを元にしています。その点はご了承ください。)
松山交差点から南へ300mほど下った久茂地(くもじ)交差点付近は、沖縄の地元企業の本社や、地元企業以外の企業の那覇支店、その他の事務所が集まる地域です。コンビニエンスストアへの需要は大きいはずです。
その辺りを拡大してみると、ファミリーマートとローソンが2店舗ないしは3店舗確認できます。暑い地域のオフィス街ということを考えると、まだまだコンビニエンスストアは数が足りておらず、まだまだ出店できるという印象を受けます。
久茂地周辺はファミリーマートとローソンの出店が皆無と言えますし、しかも交差点に面していたり、有名企業の名が付くようなビル内にあると思われる店舗も確認できません。“大手”のセブンイレブンが出そうな場所が案の定、空いているのです。(この点、那覇市以外の市場について確認するとより露骨なのですが、それは後日触れる予定です。)
以上のような観点で、まずは那覇市中心部の地図を見て、セブンイレブンが出店しそうな場所を予想してみてください。セブンイレブンは那覇市で14店開店するそうです。言い方を変えると、皆さんがもし那覇市にこれから14店を出店するとしたらどう店舗を配置しますか?御自身の予想を地図にプロットしてみてください。
何事も、御自身の予想や、恐らくこうなるのではないだろうか?という仮説を持って物事を見ることは、自分を賢くするものだと思います。セブンイレブンは7月中旬から開店を開始するそうですので、しばらく考えてみてください。
予想が当たったかどうか、ぜひ結果を確認、検証してみてください。
(追記)飽和状態のコンビニ市場は今後どうなるか?
セブンイレブン沖縄初出店のニュースは大きな話題になりました。沖縄県1号店に多くの人が殺到したことに注意が行きがちですが、
● セブンイレブンが14店を一気に同時期にオープンしたこと、
● 店舗が那覇市周辺(大雑把にいえば県南部)に集まっていること、
● その後、県内を北上するように出店領域を徐々に拡大すること、
などの点で、ある未出店エリアに多店舗化する際の手本とすべき事例だと思われます。
これから観光シーズンを迎える7月というタイミングも絶妙な気がします。
また、出店可能な場所を既に持っている、不動産情報をいち早く得やすい事業を行っている地元企業とフランチャイズ契約をしていることも、セブンイレブンの急速な拡大が可能な要因と考えられます。
その辺りを指摘する論調をほとんど見かけませんので、ここで補足させていただきました。
補足ついでにもう一点。
コンビニエンスストア市場は飽和状態と言われています。確かに今後、店舗数が増えてコンビニエンスストア全体の売上も増えるということはないのでしょう。では何が起こるか?
それは、一定量の売上の企業間の“食い合い”です。
今後、生活圏内にセブンイレブンの店舗が増えるにつれて、これまでのコンビニ利用者の内面には、立地の利便性への期待が高まることが予想されます。
店舗が十分にないときは、それほど不便を感じることもなく利用していたけれど、自分にとって便利な場所に新たな店舗が出店したことで、それまで利用していた店が急に不便に感じたり、過去のものに感じたりしたことはありませんか?
ほとんどの消費者は“ここにコンビニがあったら良いな”ということは考えず、あるとき店舗が新しく開いて“そうそう、ここにあってほしかったんですよ”と気づくように思います。
先行する2社の店舗の位置を地図で確認した限りですが、要所にあると思われない店舗が目立つように思われます。そこへ、既存店周辺の要所要所に徐々にセブンイレブンが出店してくるわけです。この場合、先行2社の既存店は、1店舗が開いて直撃を食らうような大きなショックを受けるのではなく、2店、3店・・・と周囲を囲むように出店されることでジワジワ痛みを感じるようになることが予想されます。
これと同じような状況は沖縄県以外でも発生していると考えられます。飽和する市場では、2、3店で挟んで相手をつぶすような出店が求められ、それはセブンイレブンの“お家芸”のはずです。
先行2社も既存店強化に動くはずですが、強化するべき店舗を厳選できるか、リロケーションも含めて対策が講じられるかなど、今後も注目していきたいと思います。