「座席稼働率」と「座席回転数」とは?

「座席稼働率」と「座席回転数」とは?

実際の店舗を分析したいと思います。分析したのは、東京都狛江市の『サンマルクカフェ狛江店』です。

サンマルクカフェ狛江店

サンマルクカフェ狛江店

サインの下に目立つように“席数136席”の看板が見えます。好天の休日の昼時です。ここは東京都狛江市の『サンマルクカフェ狛江店』です。子ども達のラグビーの試合の帰りに見つけた店です。

店前を徒歩で通過する人はほとんどいない住宅地のロードサイド店舗です。ドライブスルー機能はありません。敷地の形状が真四角ではなく、やりにくい区画です。座席数136に対して、駐車場台数は27で、ほぼ満車の25台が駐車していました。

店内は静かな雰囲気なのでガラガラなのかと思いきや、驚くことに、席はほとんど埋まっているのです。しかし、大人数で来店し雑談している人はほとんどなく、1人や2人客がほとんどです。

2人がけの席を1人客が使用している、カフェではよく見る光景から考えると、客席数136に対して実際の客数はその半分の68人程度と計算し、そこから自動車台数25を差し引くと43です。43人は自動車以外の方法で来店したと考えられます。しかし、先ほども記しましたが、ロードサイドの店であり、店の前を歩いている人はほとんどいません。となると?

ということで外に出ると、あるものがズラリとならんでいました。そうです、自転車(一部バイク)です。同行した息子たちに数えてもらったところ、なんと、自転車の台数は43台だったのです!

近隣の住民が自転車で来店して利用しているのでしょうが、読書をしたり、試験勉強をしたりと、図書館・自習室として店を利用している客が目立ちます。入店しても満席ですぐあきらめて帰る人もちらほらいました。

以上より、駐車場台数と席数がアン・バランスなカフェ・喫茶店の店舗の状況を推理してみたいと思います。

“満席で良かった”という話ではなく、“満席でも怖い”というお話

事前知識として座席に関しては二つの数字を把握する必要があります。

それは、座席稼働率座席回転数です。

座席稼働率とは、すべての座席の何パーセントが稼働しているか、ここでは、すべての席数に対する、代金を支払ったお客さんに利用されている席数の比率です。極端ですが、2人掛けのテーブルを1人で使用している場合、1席は使用されていますが、もう一席が荷物置に使われていたら、座席の稼働率は50%です。

座席の稼働率が100%、というのはなかなか達成しにくい数字のように思います。一人がけのカウンター席を増やすことや相席を承諾してもらうなどによりカフェ・喫茶店は座席稼働率を高めようとしますが、それでも100%は難しいものです。

次に座席回転数ですが、これは一つの席が一日に延べ何人に利用されたかを意味する数字です。入れ替わり立ち代わり何人がその席を利用したかです。

席はありませんが、立ち食いそば屋は、食事をするスペースは手狭なものの、(座席)稼働率と回転数を上げることによって“客数”を増やしています。ある瞬間、満席なのは喜ばしいことなのですが、それだけではなく“回転”しているかも確認する必要があるのです。

『サンマルクカフェ狛江店』は、一人で座れる席も多く、稼働率は高い印象を受けました。しかし座席が“回転”している様子はなく、店内は静かで動きが感じられませんでした。それは、1人で来店して試験勉強や読書、PCでの作業などに没頭している人が多いためです。後から入店された方(車で1人で来店)で、満席の様子を見た瞬間に帰られた方もいました。

以下は推測ですが、お客さんの大半は周辺住民であり、座席数が136もあるということで、彼らには確実に座れる店と認識されているのでしょう。多少遠くても自転車でわざわざやって来るからには、コーヒーを一杯飲んですぐに帰ろうとは考えないはずです。むしろ朝早く店に行き、好きな席、つまり、作業しやすくて店員の目に入りにくい席、を確保し、申し訳程度に飲み物等を買い、勉強、仕事、読書などの作業に打ち込もうと考えるのではないでしょうか(私ならそう考えます)。わざわざ自転車で来ているので、滞在時間は数時間に及ぶこともざらです。こうなると回転数は非常に低くなります。

仮にですが、136席で稼働率60%、回転数を3.5回とした場合、客数は285.6人。客単価をやや高めの800円とした場合、日販は228,480円です。非常に心配になる数字です。人件費をかけられないのか、店員さんの数も少なく、店内を巡回する機会も減り、自習室化がますます進んでいるようでした。

業態転換などを検討されているのかもしれませんが、引き続きウォッチしてみたいと思います。