商圏内における「良い立地」とは?~「後背地」概念を理解する~

後背地とは?

出店の立地選定において理解すべき概念の一つである、「後背地(こうはいち)」という概念を説明します。後背地とは、文字通り店舗の背後にある地域、商売で言えば商圏のことです。

下の図は、白金台駅周辺のスーパーマーケットの立地を示しています。図では、青の部分が「後背地」です。

白金台のスーパーマーケット商圏

真ん中にある「プラチナドン・キホーテ」がある場所に出店していた「東急ストア」は結局撤退することになりました。なぜでしょう?

白金台駅周辺の航空写真をみると、マルエツ、いなげや、コンビニ(セブンイレブン)の後背地には、住宅が密集していますが、東急ストアのあった物件の後背地には、オフィスビルやお寺などが多いことに気が付きます。


【図2】白金台の航空写真 (出所:Yahoo!地図)

都心のスーパーマーケットにとっての良い立地とは?

さて、皆さんもスーパーマーケットで買い物をされると思います。その時、どのくらいの量の商品を買われますか?

スーパーマーケットはワンストップ・ショッピングの利便性を提供する業態のため、恐らく、大きいビニール袋一杯か、場合によっては二杯分の買い物をされると思われます。飲み物なども買うと、袋も結構重たくなるのではないかと思います。

では、あなたが普段そのスーパーマーケットで買い物をされるのはなぜですか?

今、単純に、最寄駅と自宅を結ぶ線上にAとBの2店のスーパーマーケットが立地しているとします。

駅 --------自宅

A          B

皆さんはAとBのどちらを利用されますか?

スーパーマーケットは利用頻度も高く、状況によって使い分けるという方もいらっしゃるかもしれませんので、その場合、AとBのどちらを頻繁に利用されますか?という質問に変えたいと思います。

スーパーマーケットで買い物をすると重い荷物を運ぶことになります。その場合、重い物を運ぶ時間と距離は極力短くしたいと考えるのが自然です。よって、このケースではBを利用する人の方が多いと考えるべきです。なぜなら自宅へ帰る際の利便性がAよりも高いためです。

立地判断においては、駅などの集客力のある施設の近くが良い立地であると考えることが多いと思います。しかし、それが全ての企業、店舗に当てはまるかを再度考えてみる必要があります。

Aのような立地が良いとされる理由は、店前を人が通行する可能性が高く、通行量も多いためです。つまり、開業後に集客できないというリスクが低いと考えられるためです。しかし、状況によっては、店前の通行量が多くても意外とお客さんをキャッチできないケースもあるのではないでしょうか?

白金台のような都心の住宅地では、人は最寄駅と自宅を行き来します。その場合、駅周辺が好立地であると考えてしまって良いのでしょうか?

自宅で消費するものを購買するために、お客さんが「自宅→店舗→自宅」、あるいは、「駅→店舗→自宅」と移動するような店舗の場合、自宅により近い立地の方が利用される確率は高まるという考え方も必要のように思います。

白金台のスーパーマーケットの配置から、後背地に住宅が密集している区域の入口やその中心にあたる立地の評価を考え直してみるのは有意義なことと思われます。

関連動画(店舗開発という仕事チャンネルより)

■ 「商圏」とは何か?商圏調査・商圏分析の方法は?【店舗開発用語解説】

「商圏」とは何か、定義は?商圏調査・商圏分析の方法や注意事項は?商圏はなぜ把握する必要があるのか?実務に即して簡潔にご説明します。

【目次】

  • 00:00 本日の講義内容
  • 00:31 商圏とは何か?(定義)
  • 01:06 “行き先”の反対語は何か?→その場所の集まりが商圏
  • 02:36 “直前に”の意味~商圏の調べ方と、商圏調査の注意事項~
  • 05:45 商圏を把握する際に注意すべきこと
  • 08:57 既存店の商圏を知らないことによる主な弊害
  • 11:49 商圏を調べる際に、いきなり顧客に尋ねるのは難しい場合は、どうすればよいか?