開店後の環境変化について考えておくべきこと~顧客、立地の利便性、競合環境~
環境は常に変化する
店舗の経営者がしがちな勘違いの一つに、「開店後も、店舗周辺の環境は、今のままずっと変わらない」というものがあります。
これは、大変重大な勘違いです。環境は生き物であり、開業後、日々刻々と変わるのです。
店舗の経営者にとって、店舗周辺の「環境」で特に重要なものは、顧客に関するものと、競争相手に関するものです。これらは、時間と共にどんどん変わりますから、そうした変化を開業前から想定し、あらかじめ対策を考えておく必要があります。そうしないと、開店当初は混雑していて売上が良かった店舗も、その状況が長く続かず、売上が落ちはじめたときに、対策が遅れてしまいます。
顧客の変化
まず、開業後、顧客の内部に変化が起こります。
最初は、物珍しさや様子見で来店する顧客も多いでしょう。彼らは、店舗が多少不便な場所にあったとしても、新規性や商品力に惹かれて、多めの労力、時間や交通費を使ってでも「わざわざ」来店してくれるかもしれません。
しかし彼らは、利用経験を蓄積するにつれて、「長時間待たされる」「店に行くまでが面倒だ」といった不満に気づき始めます。そして彼らは、時間の経過とともに、商品力「以外」の事柄を要求するようになります。これらは「利便性」という言葉で説明できます。利便性は英語で“convenience(コンビニエンス)”といいます(コンビニエンスストア=コンビニの語源です)。コンビニが提供するものには、商品・サービス以外に立地や営業時間等のコンビニエンスが含まれていますが、そうしたコンビニエンスまでもが、消費者から期待されるようになっていきます。
また、開業後に利用していた顧客がいつまでも利用し続ける保証はありません。彼らの生活環境が変われば、行動も変わるでしょう。転居、卒業、結婚、退職など個人的な生活環境の変化があって、店舗周辺に来る理由がなくなれば、ほとんどの場合、利用を止めるでしょう。例えば、顧客の大半が近所にある企業の退職間際の社員である場合、彼らが退職した途端に売上が急落することは容易に想像できます。そのために、常に客層を詳細に把握し、将来を予測して準備をしておく必要があります。
立地の利便性の変化
店舗の立地の利便性が低下することもあり得ます。最寄駅の反対側に新しい改札口ができた、新たな商業施設が開発された、区画整理があり道路状況が変わった、などの外的な理由で人の通行の流れは簡単に変化するものです。
このような地域の将来計画に関する情報には敏感になっておく必要があり、場合によっては、店舗の移転等も視野に入れた準備が必要になることもあります。
店舗の利便性は、自分の店舗に落ち度がなくても環境変化によって低下することがあり得ますが、その場合でもやはり「わざわざ」来店を期待することは危険です。
競合環境の変化
競争相手の出店による環境変化も考えられます。
自分の店舗が行列のできる繁盛店だったり、行列こそできなくても予想以上に集客し繁盛しているとします。こうした状況をいつまでも喜んでいていいのでしょうか?
行列や満員・満席は何を意味するのでしょうか?
それは、自分の店舗が提供する商品やサービスに対する周辺地域の需要量に対して、供給量が十分でないことを意味します。言い換えると、潜在的な売上(まだ顕在化していない、とりきれていない売上)が大きいことを意味します。
この場合、その潜在的な売上を機会(チャンス)ととらえた競争相手が、類似した商品・サービスを提供する店舗を新たに開業する可能性を考慮する必要があります。仮に競争相手が自分の店舗よりも利便性の高い立地に出店した場合、売り上げの低下を覚悟する必要があります。
立地選定においては、市場ボリュームと競争環境の変化で「最悪の事態」が起こった場合を同時に考慮する必要があります。市場ボリュームが小さい市場でこのようなことが起こった場合、売り上げの低下は強烈なものになることを知っておく必要があります。