「カニバリゼーション(通称カニバリ)」の基礎知識

カニバリゼーション(通称カニバリ)とは?

既存店の近くに新たな店舗を開店しようとする際に、必ずといって良いほど議論されるのがカニバリゼーションです。英語では”cannibalization”で、直訳すると「共食いする」という意味です。そこから派生して、同じ会社の2つ以上の店舗が顧客や売上を食い合う状況を意味する用語として使われています。

カニバリゼーションは、通称「カニバリ」と呼ばれています。カニバリゼーションが起きることを「カニバる」などと表現することもあります。

このカニバリは厄介なのもので、その実態が明らかになっていません。そのため、店舗を開店したい店舗開発部門と開店後の予算に責任を負う営業部門の間で、議論がかみ合わなかったり、非常に感情的で非論理的な議論になったりすることがあります。

近くに2店舗目を開けて全体の売上が2倍になるわけはないとして、既存店の売上は一体どのくらい影響を受けるのだろう?こんな問題を考えるための材料を紹介します。

カニバリの大きさを決めるものは何か?

カニバリを考えるときに、チェックすべきことは次の点です。

  • その市場の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)
  • 2つの店舗のサイズ2つの店舗の立地
  • 2つの店舗が入店する施設の規模
  • 2つの店舗が入店する施設の立地
ここで、「カニバリ」について考える前に、大事な話を一つ。

店舗の売上はどう決まるのか?

店舗の売上は店舗ごとに異なりますが、それはなぜか?ということを考えてみましょう。

店舗の売上を規定する要因には、次のものが含まれます。

 A.一度決まると・決めると、変えることが困難な要因
  • マーケット関連の要因:量・質・成長性、集客要素
  • 競合(自社・他社):店舗数、店舗の規模(面積・座席数)、立地の利便性
  • 物件の特性:立地の利便性、物件構造、レイアウト
B.短期的に変わる、ないしは、変えられる要因
  • その他:天候、商品力、オペレーションの能力など

店舗開発部門は、主に「A」に含まれる要因を店舗ごとに決定する部署です。

オペレーションスタッフ(店舗運営/営業部門)は、開業後の「B」の要因に対応したり、それらを管理しながら実際の売上高や利益額に責任を持つ部署です。

オペレーションスタッフは日々の売上の変化に敏感にならざるを得ないため、「B」の要因を中心に売上予測を考えてしまいがちです。しかし、売上の大部分は、実は「A」の要因で決まるのです。それらは、出店した後に思うように売上が伸びず、出店判断を誤ったと気づいたからといって修正が困難なものばかりです。

カニバリは、既存店舗の「A」の「競合(自社)」が変化することで、多くの場合、既存店の売上にマイナスに影響します。店舗の売上高や利益額に責任を持つオペレーション・スタッフが神経質になるのも無理はありません。しかし、あまりにもカニバリに神経質になりその出店機会を放棄してしまうと、その出店機会を直接的に競合する他社が奪ってしまうことも十分考えられます。それは「A」の「競合(他社)」が変化することを意味し、これも多くの場合、既存店の売上にマイナスに影響します。

カニバリは、客観的な方法で、具体的に何%落ちるというところまで予測がなされるべきものです。次に、その方法を述べたいと思います。

カニバリのパターン

具体的な数字を求める前に、カニバリの大きさをランク分けする方法をお話しします。

近くに新店が開いたら「ものすごく影響を受けそう」とか、「あまり無さそうだけどゼロではない」とか、直感的に思うことがありますよね。それをパターン化してみます。

単純化のため、ある市場に1店舗しかなく、2号店を出店した場合のカニバリを考える場合を考えます。

カニバリを考えるときに、チェックすべきことは次の点です。

  • その市場の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)
  • 2つの店舗のサイズ
  • 2つの店舗の立地

カニバリは客観的な方法で、具体的に何%落ちるというところまで予測がなされるべきものです

次に、その方法を述べたいと思います。

既存店と新店が①ともに路面店舗の場合と②ともに商業施設内の店舗の場合とで分けて考えます。

<カニバリのパターン①2店がともに路面店>

具体的な数字を求める前に、カニバリの大きさをランク分けする方法をお話しします。

近くに新店が開いたら「ものすごく影響を受けそう」とか、「あまり無さそうだけどゼロではない」とか、直感的に思うことがありますよね。それをパターン化してみます。

単純化のため、ある市場に路面店舗が1店舗しかなく、新たに路面に2号店を出店するときのカニバリを考えるケースを考えます。

カニバリを考えるときに、チェックすべきことは次の4点です。
①  その市場の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)
②  2つの店舗の間の距離
③  2つの店舗のサイズ
④  2つの店舗の立地
① その市場の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)

市場規模が大きい場合、2号店を出してもカニバリは発生しにくいものです。仮に2号店にお客さんが流れたとしても、市場規模が大きいため既存店は新しいお客さんを獲得しやすいと考えられるためです。だから、新宿、池袋、栄、梅田、天神・・・などの場合には、カニバリは議論にもならないかもしれません。

しかし、各駅停車しか停まらないような駅の場合「2店舗も出して大丈夫か?」という心境になりますよね。そう、その感覚です。市場規模が小さければ小さいほどカニバリは発生しやすい一方、市場規模が大きければ大きいほどカニバリは発生しにくいのです。

② 2つの店舗の間の距離

2つの店舗の間の距離。これは分かりやすいと思います。100メートル離れた新店と1キロメートル離れた新店では影響の仕方が異なります。当然、2店舗の間の距離が近くなればなるほどカニバリは大きくなります

③ 2つの店舗のサイズ

店舗のサイズ(面積)も影響します。面積の大きい店舗と小さい店舗では、お客さんはどちらが利用しやすいですか?当たり前の話ですが、面積の大きい店舗の方です。つまり、1号店よりも面積の大きい2号店を出店すればカニバリは大きくなります

④ 2つの店舗の立地

最後に立地です。1号店より便利な場所に2号店を開ければ影響は大きくなりますが、立地の利便性が1号店と同じ程度かそれ以下の場合のカニバリの影響は小さいと考えられます。つまり、1号店よりも良い立地に2号店を出店すればカニバリは大きくなります

以上の4項目を組み合わせると、カニバリの強度は16ランクに分かれます。
カニバリ強度 市場規模 2店舗間の距離 2号店の方が 2号店の立地が
16 小さい 近い 大きい 1号店以上
15 小さい 近い 大きい 1号店以下
14 小さい 近い 小さい 1号店以上
13 小さい 近い 小さい 1号店以下
12 小さい 遠い 大きい 1号店以上
11 小さい 遠い 大きい 1号店以下
10 小さい 遠い 小さい 1号店以上
9 小さい 遠い 小さい 1号店以下
8 大きい 近い 大きい 1号店以上
7 大きい 近い 大きい 1号店以下
6 大きい 近い 小さい 1号店以上
5 大きい 近い 小さい 1号店以下
4 大きい 遠い 大きい 1号店以上
3 大きい 遠い 大きい 1号店以下
2 大きい 遠い 小さい 1号店以上
1 大きい 遠い 小さい 1号店以下
<カニバリのパターン②2店がともに施設内の店舗>

最近は既存店が駅ビルの中で、新店が新たに開発される商業施設といったケースが増えています。この場合、自社の店舗よりもテナントとして入居する施設間の関係が、カニバリの重要な要因になります。

しかし、基本的な考え方は路面店のケースと同じです。チェックするべきことは次の4点です。

①  その市の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)

②  2つの店舗が入店する施設の間の距離

③  2つの店舗が入店する施設の規模

④  2つの店舗が入店する施設の立地

では、自社のチェーン店で、「カニバリがあったか、なかったか?」はどのようにチェックすればよいのでしょうか。

過去にカニバリがあったかどうかをチェックする方法

店舗の売上を規定する要因には、次のものが含まれます(復習)。

A.一度決まると・決めると、変えることが困難な要因
○ マーケット関連の要因:量・質・成長性、集客要素
○ 競合(自社・他社):店舗数、店舗の規模(面積・座席数)、立地の利便性
○ 物件の特性:立地の利便性、物件構造、レイアウト

B.短期的に変わる、ないしは、変えられる要因
○ その他:天候、商品力、オペレーションの能力など

店舗周辺で「A」の要因の一部に変化があった店舗の売上推移

デイリー(日次)、ウィークリー(週次)、マンスリー(月次)の既存店売上データを時系列に見ると、その時々の短期的な要因の影響を強く受けてしまい、Aの要因の影響を把握するのは困難です。

そこで、短期的な変動を除去した12ヶ月移動平均を使います

近くに自社店舗が出店した場合のカニバリの発生の有無を分析する際も、この12か月移動平均を用います。なぜなら自社店舗の出店は「競合店舗数の増加」を意味し、それは、要因Aに含まれるためです。

次に、平均値の差の検定をします。

・差があるといえるか?(有意差があるか?)

・開業前と開業後の平均に有意差があるか?

をチェックします。